「ホームインスペクション」とは、ホームインスペクター(住宅診断士)と呼ばれる専門家が、依頼を受けた住宅のコンディションについて調査を実施し、欠陥や補修すべき箇所の有無やその時期などを客観的に診断するもの。「住宅診断」や「建物検査」とも呼ばれています。
たとえば、新築住宅の内覧会などで買主様に同行し、専門家の立場から住宅の不具合の有無を検査するのもホームインスペクションのひとつです。また最近では、中古住宅の売買でもホームインスペクションが注目されています。専門家が住宅の劣化状況などを調べることで、安心して中古住宅が売買できる環境を整えるため、国が重要施策として掲げているからです。
ホームインスペクションでは具体的に以下の箇所を調べていきます。
- シロアリ被害
- 雨漏り
- 給排水管の漏水
- 換気扇・給湯器・水栓・トイレ・建具・窓・ドアなど設備の確認
- 建物・床の傾き
- 構造体の状況
- マンションの場合は、共用部分の利用状況
住宅の規模や調査の内容によっても異なりますが、数時間で終了します。建物面積が100平米(約30坪)程度の場合は2~3時間、木造の一戸建ての場合は5~6時間程度かかります。費用は会社によって異なりますが、5~6万円程度が一般的です。
ホームインスペクションが求められる理由
これまで日本の住宅流通では、新築の場合、ハウスメーカーや工務店などがある程度住宅の保証をしてきました。しかし、中古住宅の場合、保証がほとんどない状態でした。売主が個人の場合が多いのがその大きな理由です。不動産会社はあくまでも「仲介」なので物件になにか問題があったとしても、責任は負いません。
しかし、住宅は高価な買い物です。買主が不安になり、中古物件の購入に躊躇してしまうのも仕方がありません。このために日本では中古住宅の流通が伸び悩んでしまったのです。
ところが最近では、人と同じような画一的な住宅ではなく、一人ひとりのライフスタイルや嗜好に合わせた住まいが求められるようになり、これに伴ってリノベーションが注目されるようになりました。物件を新築だけに絞るとエリアも限られ、予算的なハードルも高くなるのに対し、中古物件も視野に入れた方が選択肢が広がるからです。そこで着目されたのがホームインスペクションでした。専門家の“お墨付き”を付与することで、中古住宅に対する不安感の払拭と安心感の醸成を狙ったわけです。
ホームインスペクションのメリット・デメリット
【売主様のメリット】
・早期売却につながる
ホームインスペクションを実施している物件は、「問題なし」という専門家の“お墨付き”が得られます。そのため、買主様に安心感を与えることが可能となり、早期の売却につながりやすくなります。
・売買のトラブルを未然に防止できる
インスペクションを実施することで、物件の持つ価値を客観的に、かつ、適切にアピールすることができるとともに、設定価格に信ぴょう性が生まれます。このことが売買トラブルを未然に防ぐことを可能に。また、必要箇所をあらかじめ補修をしておくことで、好感度アップも期待できます。
・瑕疵担保保険に加入できる
ホームインスペクションを実施し、保険の審査に合格すると、「既存住宅売買瑕疵保険」(以下、瑕疵担保保険)に加入できます。瑕疵担保保険に加入すると、売却後に物件に瑕疵(不具合)が見つかった時、その補修費用を買主様が保証金で補うことができます。加えて、瑕疵担保保険付きの住宅は、買主様が登録免許税や不動産取得税、住宅ローン控除など税制の優遇措置を受けられます。買主様に対して経済的メリットをアピールできるわけです。
【売主様のデメリット】
・費用がかかる
前述のようにホームインスペクションの実施には費用がかかります。
・瑕疵や不具合が見つかった場合、補修の必要がある
ホームインスペクションの実施によって瑕疵や不具合が見つかった場合、補修費用の負担が生じます。補修をしないまま、買主様に納得いただいた上で売却する方法もありますが、その内容によっては買い手がなかなか見つからないことも。とはいえ、買主様が購入後にリフォームをするケースもあります。補修は買主様の希望を聞きながら、不動産会社と相談して決めるのが良いでしょう。
まとめ
日本において、ホームインスペクションは始まったばかりです。宅地建物取引業法改正案が成立したことで、2018年4月から中古住宅取引の際に宅地建物取引業を営む企業にホームインスペクションの斡旋の可否が義務付けられました。今後はさらにホームインスペクションについての認知や普及が進み、実施する人も増えていくと思います。欧米のように「インスペクションを行うのが常識」という風になっていくかもしれません。
ホームインスペクションはデメリット以上にメリットも大きいものです。さらに詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にお問合せください。