不動産会社と媒介契約を締結した後、売主様が記入するべき書類が2つあります。「物件状況報告書」と「付帯設備表」がそれです。物件状況報告書は、売主様が知りうる物件の雨漏りや周辺の状況に関する書類のこと。また、付帯設備表は、建物内にある設備等と故障の有無などを記す書類をいいます。これら2つの書類について、今回と次回の2回で見ていきましょう。
物件状況報告書とは?
売主様が、物件状況報告書の書式を渡され、記載を求められたとき、「どの程度まで記入すればよいのかよくわからないので、不動産会社さんにおまかせしたい」と言う人がいます。しかし、これはおすすめしません。
売主様の物件の状況や過去の履歴は、第三者である不動産会社が判断することはできません。物件の現在の状態や過去の修繕履歴の経緯を買主様に伝えるのは売主様の責任です。行政からの通達でも「売主等の告知書(物件状況報告書や付帯設備表)を買主に渡す際には、当該告知書が売主等の責任の下に作成されたものであることを明らかにすること」と明記されています。
不動産会社によって書式や細かい内容について多少の違いはありますが、骨子は共通しています。たとえば、建物の場合の物件状況報告にある「雨漏り」という項目を見てみましょう。
「雨漏り」の内容について「現在まで発見していない」「過去にあった」「現在発見している」などの選択肢が記載されています。さらに、それら選択肢から「現在発見している」を選んだ場合、その箇所や状態について記載するようになっています。
また、選択肢の「過去にあった」を選んだ場合、その過去にあった雨漏りは、どこの箇所で、修理は済んでいるのか、いないのか、そして、修理が済んでいる場合、いつ頃修理をしたのか、などを具体的に記載する欄があるはずです。
売主様が注意すべきこと
欠陥や不具合を知っていたにもかかわらず、それを買主様に知らせなかったと評価された場合、不動産売買契約書がどのように定めていても、売主様に損害賠償義務などが生じるリスクがあります。これは不動産売買契約書のなかに「契約不適合責任免責特約」があったとしても同様です。売主様に損害賠償義務などの不利益が生じないようにするためには、売買契約の際、知っていることはできるだけ買主様に説明しておくべきです。
告知書(物件状況報告書や付帯設備表)に不具合や過去の履歴などを明記し、買主様に渡しておけば、それらの記載事項に関しては、売主様が買主様に告知・報告した、ということになります。買主様は、物件状況報告書に記載された事柄が存在することを前提に買った、ということになるため、将来、「売主は知っていたのに知らせなかった」などとクレームを受ける心配がなくなり、売主様が責任を追及されるリスクが減るメリットがあるわけです。
まとめ:知っていることは包み隠さず記載する
売主様の立場からすれば、買主様から後々クレームを言われそうな事柄は言うまでもなく、クレームをつけられるかどうかわからなくても、「知っている情報は包み隠さず買主様に知らせておく」という姿勢が、結局は売主様自身を守ることにつながると言えるでしょう。
売主様が物件状況報告書の記載で手を抜いてしまうと、結局は、売主様が買主様からの損害賠償請求や責任追及を受けるリスクを高めるだけになってしまいます。これから初めて住む買主様の立場に立って、親切丁寧な記入を心がけることをおすすめします。
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